三重県津市にある「みえぎょれん」のサイトです。「みえぎょれん」や三重の海の紹介、お魚を使った料理レシピも掲載してます。

 

2024年度・第46回 三重県海の子作品展 審査講評(三重県美術教育研究会 後藤みちる)

 第46回三重県海の子作品展に入賞された皆さん、おめでとうございます。
 猛威をふるった新型コロナウイルスの流行も収まりをみせ、オーバーツーリズムという社会現象が問題となっています。そのような中で作品展への出品数も年々回復し、海や水族館に家族で出かけたり、漁港や漁村に絵を描きに出かけたりした様子が作品から伝わってきました。以前のような日を取り戻しつつある子どもたちの様子に喜びと安心を感じています。

 小学校の部で三重県知事賞を受賞した志摩市立大王小学校6年の坂中茉千さん『養殖筏と工場』は、伊勢志摩の産業を支える養殖業の様子を描いた作品です。水面に映る工場の風景や海の色、筏の骨組みや船の上に積まれた網などがていねいに描写され、船が波に揺れているような臨場感を感じます。
 また、三重県教育委員会賞を受賞した桑名市立益世小学校6年の後藤美杏さん『漁師さんのやさしい笑顔』は、船に乗りしじみ漁の見学に行った先で出会った漁師を描いた作品です。陽に焼けたたくましい姿に少し緊張したのでしょうか。やさしい笑顔が印象的に描かれています。
 中学校の部で三重県知事賞を受賞した伊勢市立五十鈴中学校3年の中村乃愛さん『西の風がふく海と船』は、港に停まる漁船と、その向こうに広がる海を写実的に描いた作品です。海の色と波を注意深く観察し、反射の光や遠近感、海の深さまでも表現しました。
 また、三重県教育委員会賞を受賞した尾鷲市立尾鷲中学校1年の片原和音さん『繋ぐ伝統の味~梶賀の炙り~』は、尾鷲市の小さな漁師町に伝わる郷土食『梶賀の炙り』を描いた作品です。一匹一匹ていねい描かれています。

 小学校の部では、伊勢エビとワカメの迫力に圧倒された驚きを、子どもらしい素直さで大きく力強く表現した岡野天栄さんの作品、海に住む生きものたちの個性的な姿や形を、一つ一つ確認しながら特徴をとらえて描いた青木美鈴さんの作品、地元の波切市場の日常にスポットを当て、働く人たちの息の合った動きを見事にとらえた濱口国志さんの作品、ウェットスーツに身を包み専用の道具を使ってアワビを捕る父の姿を、画面いっぱいにダイナミックに描いた畑紅玲愛さんの作品が入賞しました。
 中学校の部では、引き揚げた魚をコンテナに移す漁師のたくましい腕と魚が跳ねる様子を、朝日が昇り明るくなり始めた空と海を背景に描いた石川雅さんの作品、人の気配がない真昼の漁港。広がる青い海を潮風と夏の日差しを感じながら描いた奥野紗空さんの作品、南伊勢町が誇る新鮮な真鯛の活造り。その美味しさと美しさの再現、そして海の幸に感謝の気持ちを込めて描いた三好一加さんの作品、夏の日の昼下がり、穏やかな波に揺れる2隻の漁船を、新緑の山々と水面に映る船の影とともに鮮やかな色彩で描いた中村日鞠さんの作品が入賞しました。

 最後に、この作品展を通して海と共にある三重の子どもたちの心と暮らしがいつまでも豊かでありますことと、多くの命を育む海に感謝の気持ちを込めまして審査の講評と致します。