三重県の海域は、木曽三川の恵み豊かな伊勢湾地区、リアス式海岸の続く岩礁と島が点在し、磯根資源、真珠等の好漁場である鳥羽・志摩地区、そして雄大な太平洋の黒潮おどる熊野灘地区に大別できます。
それぞれの変化に富んだ海域・地勢のもとで、それぞれの特徴を生かした多様な水産業が営まれています。
伊勢湾地区
伊勢湾は、水域面積 2,342㎢の規模を持つ我が国最大級の内湾です。湾の平均深度は16m、最深部の湾中央でも38m程度ですが湾口が狭く盆状になっており木曽三川等からの栄養の恵みを受ける典型的な内湾性漁場を形成しています。
伊勢湾地域では、海面に近い表層や中層にいる多獲性魚類を対象とした船びき網漁業、底棲魚介類を対象とした小型底引き網漁業、沿岸部では採貝漁業、黒のり養殖漁業が主に営まれています。
船びき網漁業では、春のイカナゴを対象とする「バッチ網」や「イカナゴ船びき網」、夏のカタクチイワシ等を対象とする「イワシ船びき網」等の漁業が行われ、未成魚はちりめんやタツクリに加工され、成魚は食用のほか加工用原料や養魚用餌料として利用されています。
小型底引き網漁業では、アナゴなどの魚類を対象とする「まめ板網」、ヨシエビなどのエビ類を対象とする「エビびき網」等の漁業が行われています。
アナゴの旬は夏から秋にかけての季節で豊かな旨味を持つ白身は、天ぷらネタや蒲焼などで賞味され、なかでも鈴鹿市若松地区で水揚げされるアナゴは「若松のアナゴ」として有名です。
また、河川からの栄養塩の供給と遠浅で平穏な漁場環境を生かし、湾内の沿岸一帯で黒のり養殖漁業が行われ、生産された黒のりの大半は「板のり」として出荷されています。
さらに、古くから、ハマグリの産地として名高い桑名を含む木曽川河口域ではアサリ、ハマグリ、シジミ、松阪・伊勢方面ではアサリ・バカガイ等二枚貝を対象とした採貝漁業が盛んに行われています。
主な魚
主な漁法
鳥羽・志摩地区
鳥羽・志摩地域は、答志島、神島、菅島等の離島を有し伊勢湾と太平洋の外洋水とが混ざり合う伊勢湾口部と、リアス式海岸と天然礁が広がり磯根資源の棲息や浅海養殖に好適な志摩半島から形成されています。
伊勢湾口部では、伊勢湾と外洋の海水が混合することにより多種多様な魚種が棲息し、トラフグ、マダイ等の多くの魚種の産卵場になることから好漁場が形成され、マアジ、マダイ、ヒラメ、トラフグ等を対象とした一本釣り、延縄、刺し網漁業等が行われています。また、離島域及び周辺では、イカナゴバッチ網や蛸壺を使ったタコ漁、ナマコ漁、小型機船底びき網漁業では一本釣り等の餌となるウタセエビが漁獲されています。
鳥羽・志摩地域沿岸では、志摩半島を代表する海女漁業や刺し網漁業によってアワビ、サザエ、ウニ、イセエビが漁獲され、また、波の穏やかなリアス式海岸の湾奥では養殖漁業も営まれており、鳥羽から的矢湾におけるカキ養殖、冬から春にかけての青のり養殖やワカメ養殖、さらには英虞湾を中心とする真珠養殖も盛んに行われています。
さらに、外洋の沖合域では、大規模な天然礁が点在し、黒潮系海流が断続的に波及することからカツオ、アジ、サバ等の回遊魚が釣り、まき網漁業等によって漁獲されています。
主な魚
主な漁法
熊野灘地区
熊野灘地区は、外洋性海況であり、急峻な地形が続き天然礁が少ないことから、他の地区と比較し、近海・沖合漁業の比重が高く、漁船規模も大きいことが特徴となっています。
この地区は、黒潮の影響により回遊魚が来遊することからブリを主な漁獲対象とする大型定置網をはじめ、カツオ、アジ、サバ、イワシ、サンマ等を対象とした一本釣り、刺網、棒受網、巻き網漁業等が営まれており、特にカツオやマグロを対象とした近海・沖合漁業が盛んな地域であり、本県のカツオ漁獲量は静岡県に次ぎ全国2位となっています。
また、沿岸域では、魚類養殖が盛んに行われ、マダイ、ハマチ等の養殖の他、近年ではクロマグロ養殖にも取り組んでおり、種苗を確保してから生簀で2~3年間飼育した後、全国へ向けて出荷しています。